おばあちゃんは洗顔、着替え、4点杖で多少の歩行は可能でしたが、日常生活は車椅子が必要。「料理は自分で作って好きなものを食べたい。トイレも自分でしたい」という2点が強い要望でした。一方ご家族側が抱えていた不安は「数年前から糖尿病を患っているので、自炊で自己管理ができるのか。調理中の火事も心配。改修の予算はどのくらいなのか」など。特に日常的に介護にかかわる奥さんとしては、「介護とは何をするのか?」といった漠然とした不安も大きかったようです。そこでリフォームの提案などをしながら、問題解決の方法を探すことにしました。
といっても私にも専門の知識はありません。介護をよく理解している業者さんに依頼して、介護保険で助成になる金額と自己資金を合わせた予算を伝え、おばあちゃんやご家族とも会う時間をもうけて設計に取りかかってもらいました。おばあちゃんは自宅に帰れると分かったら、それまで以上にリハビリをがんばって、なんと階段の昇降ができるようになったんですよ。家族だけで抱えている問題を第三者に話して問題解決の糸口が見えてくるだけでも、精神的な不安が軽くなったり、活力が湧くということを実感した出来事でした。
改修したのは、階段の手すり・寝室・トイレ・キッチン・廊下とスロープなど。身体のサイズや動線、生活スタイルに合わせて設計することが大事なので、施工途中に何度かおばあちゃんにも来てもらって、階段や室内の使い勝手を試してもらいました。介護を目的にした改修は、一般的なリフォームと違って不安や気苦労も多くなりがちです。それはケアマネージャーにとっても同じことが言えるんですよ。ですから介護の知識がある業者さんとの出会いと、信頼で結ばれるコミュニケーションが大きなポイント。今回のケースはとても順調に進んで、満足のいく仕上がりになりました。おばあちゃんもご家族も、私もほっとしています。